賃貸人と賃借人の意味とそれぞれの義務
不動産投資に限った言葉ではありませんが、「賃貸人」と「賃借人」という言葉があります。
平たく言うと賃貸人は賃貸不動産を貸している人、つまり大家さんのことを意味し、賃借人は賃貸不動産を借りている人で入居者を指します。
賃貸人と賃借人にはそれぞれ権利と義務がありますので、本記事では賃貸人、賃借人の義務の違いを紹介します。
賃借人の義務
- 賃料支払義務
- 現状回復義務
- 契約内容遵守義務
まずは入居者である賃借人の義務について見ていきましょう。
おもな賃借人の義務には、賃料支払義務、現状回復義務、契約内容遵守義務があります。
賃料支払義務
賃料支払義務は、文字通り賃料を支払う義務のことです。
入居時に定めた家賃を決まった日に滞りなく支払いをする義務のことです。当然のことではありますが、賃料が支払われなかったり遅れたりすると家賃滞納ということになります。
現状回復義務
原状回復義務は、賃貸契約が終了して退去する時には賃貸不動産を原状回復させて賃貸人に返還しないといけない義務のことです。
「原状」には自然損耗は含まれませんので、変更を加えた場所や入居中に賃借人の過失でできた傷や汚れなどを修繕することを指します。
原状回復義務をめぐるトラブルとしてよくあるのが、敷金の返還トラブルです。
退去時に原状回復をするための費用は敷金から差し引いた後に賃借人に返還されることになりますが、賃貸人が原状回復を「貸した当時と同じ状態」に戻すことと勘違いして多く修繕費を差し引き、賃借人の側から見ると「敷金が戻ってこない」「戻ってくる敷金が少なすぎる」となることです。
最悪訴訟になることもあるので、入居者は敷金返還ルールをよく確認する必要がありますし、賃貸人の立場でも後々のトラブルを避けるために敷金返還ルールを明確にしておく必要があります。
契約内容遵守義務
契約内容遵守義務は、賃貸契約時の契約内容をきちんと守る義務です。
契約内容には家賃の支払いなども含まれますが、マンション、アパートなどの集合住宅に入居する場合はその中のルールがありますので、これについても守る必要があります。
ペットを不可として契約しているのにペットを飼ってしまっては当然いけないわけで、契約内容を含めたルールを守る義務があります。
賃貸人の立場からすると守ってほしいルールは契約に盛り込むようにして、賃借人の良識に任せずきちんと明文化しておくことがトラブルの予防になるといえます。
賃貸人の義務
- 賃借人に使用収益させる義務
- 修繕義務
- 費用償還義務
一方、賃貸人の義務にはおもに「賃借人に使用収益させる義務」「修繕義務」「費用償還義務」があります。
賃借人に使用収益させる義務
賃借人に使用収益させる義務とは、住居であれば入居者が生活できるように部屋を明け渡して使用できるようにするという義務です。
当たり前ではありますが、契約開始時にはきちんと入居できるようにして物件を使用できる状態にしておかないといけません。
使用できるというのは専用部分だけではなく、ゴミ捨て場やエレベーターなどの共用部分についても同じことが言えます。
修繕義務
修繕義務は、賃貸物件で修繕が必要になった場合は速やかに修繕を行い、その費用を負担するものです。
最近はあまり聞きませんが、雨漏りなどをしていては普通に生活をすることが難しいですし、家賃をもらって家を貸している以上当然それを修復する必要があります。
費用償還義務
費用償還義務とは、賃借人が物件に費用をかけた時に、その費用を賃貸人が負担をしなくてはいけないという義務です。
賃借人が費用をかけて物件に対して行う行為は、費用の必要性によって2種類に分類することができ、それぞれで賃貸人の費用負担の額やタイミングが異なります。
費用は、窓ガラスや雨漏りの修繕など必ず必要になるものを「必要費」といい、ウォシュレットやクロスの張り替えなど物件の価値を高めるためにかけられた費用を「有益費」といいます。
- 必要費:物件を使用する上で必要になる費用
- 有益費:必須ではないものの物件の価値を高めるための費用
必要費の場合は、本来賃貸人が行うべき修繕を賃借人が立て替えて行ったようなものですので、賃貸人は直ちに全額を賃借人に支払わないといけないことになっています。
一方で有益費は物件の価値は上がっているものの、使用する上で必須の費用でもないので、賃貸契約終了時に価値の増加分か賃借人が支払った費用分を支払えば良いということになっています。
賃貸人、賃借人の義務ともに冷静に考えると当たり前のことばかりですが、どちらかがこの義務を勘違いしていると利害が相反しますのでトラブルとなることが多くなります。
これらはなるべく契約時に確認をすることでトラブルを減らすことになりますし、大家の立場で言うとそのような常識が守れない人には入居をお断りするというのも一つの選択肢といえます。
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